アメリカの敗北?民主主義の危機? 相手を否定するのではなく、話し合いからはじめるべきでは?

投稿者: | 2024-11-10

アベプラの話題から、ワタシが今考えていることや感想などを書いていきます。

2024年の大統領選挙でトランプ氏が勝ったことで、それがアメリカの敗北であり、民主主義の危機だという話題です。

その一番の根拠となっているのが、学歴が低いほどトランプ氏に投票したこと。

実際に動画の中でも、トランプに投票した人たちに対して、見下した発言が非常に目立ちました。

ワタシ的には民主主義という観点から考えると、本動画で話されていることこそが民主主義の危機ではないのかなと思います。

学歴が低い人や教育を受けていない人、労働階級の票は不要か?

本動画では、知識レベルの高い人たちはハリス氏に投票し、知識レベルの低い人たちはトランプに投票したというような言説でした。

学歴が低い人や教育を受けていない人、労働階級の人たちの行動は間違っているという流れです。

彼らは一体、何を言っているのか、ワタシには理解できませんでした。

学歴が低い人や教育を受けていない人、労働階級の人たちも国民です。1票は1票です。

そして、民意とは、国民一人一人の考えの集合体であり、決して知識レベルの高い人たちの考えをまとめたものではありません。

彼らの言い振りを見ていると、学歴が低い人や教育を受けていない人、労働階級の人たちに投票権を与えるのは危険であると言わんばかり。

しかし、ワタシとしては、それこそ民主主義の危機だと思います。

投票権を持つのに条件を与えるということは

投票権を持つことに、条件を与えるというのは、ある意味、貴族政や専制支配に近い状態と言えるでしょう。

現在、知能レベルを測るのに使われてる指標として、IQががあります。IQは遺伝による影響を受けることがわかっていて、高いIQの人からは高いIQの子どもが生まれやすいです。

IQが高いということは、それだけ処理能力が高く、勉強が比較的得意と言えるでしょう。

例えば、大卒の人だけに投票権を与えるとすると、その子どもも投票権を得る可能性は高いです。また、それを見越した上で、結婚相手を選ぶようになることは容易に想像できます。

つまり、社会はIQの高い人たちと、IQの低い人たちに分かれ、IQの高い人たちが社会を統治するシステムの国家です。

そのような国家は、民主主義国家とは到底言えません。

IQの高い人たちによる統治国家は専制・貴族政治を生む

田中芳樹先生の小説 銀河英雄伝説という小説があります。皇帝と貴族が支配する銀河帝国と、帝国から脱出した共和主義の人々が建国した自由惑星同盟が戦う銀河を舞台にした壮大なSF小説です。

銀河帝国では、その昔、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが建国した国で、劣悪遺伝子排除法(身体障害者や貧困層、精神障害者への弾圧・断種を容認する法)を制定し、そのような人々を社会から排除しています。

ルドルフは専制政治を行い、貴族社会が誕生しました。言ってしまえば、優秀な遺伝子を持っている人たちによる統治国家です。

まさに、前述のIQの高い人たちによる統治国家は、このルドルフの考え方に近いと言えるでしょう。

結局、銀河帝国は、専制・貴族政治になり、専制君主は当然世襲、貴族もほぼ世襲という国家になりました。

つまり、優秀な人による統治国家は、専制・貴族政治に繋がるとワタシは考えています。

余談ですが、ルソーは、

世襲による貴族政は、あらゆる政府の中でも最悪のものである ルソー

と述べています。

これについては、ワタシも同意です。

専制・貴族政治の国家を作りたいわけじゃないという反論

このように書くと、ハリス氏を支持した知的階級の人たちは、専制・貴族政治の国家を作りたいわけじゃないという反論があるでしょう。

そうであるならば、本動画の議論のテーマは、民主主義の問題ではなく、マーケティングの問題になるはずです。

または、ハリス氏の政治方針や施策の内容の問題点を挙げるべきでしょう。

しかし、本動画の議論は、終始、トランプ支持者が愚か者であるということに終始しています。

ですので、彼らは専制・貴族政治の国家を作りたいと考えているとしか思えません。

また、教育レベルを問題にするのであれば、アメリカの全体の教育レベルを上げることがテーマになるはずです。

どうすれば、より多くの人が大学で学べるような社会になるのか?を考えるべきでしょう。

ところが、そんな話は一切出てきません。

それはなぜか? もし、多くの人がちゃんとした教育を受け、全体の教育レベルが上がると、自分たちの存在価値が相対的に下がるからです。

彼らがしたいのは、自分たちが愚かだと思っている労働階級の人たちを支配したいだけとも言えます。

ずっと動画を見ていて、そのような思想がにじみ出ていることをヒシヒシと感じてしまいました。

民主主義とは話し合いで解決する社会

民主主義とは何でしょうか?

動画の中では、民主主義は多数決だと思っているがそれは違うという方がいました。

しかし、民主主義は選挙で選ばれた人が政治を行うシステムで、選挙というのは多数決でもあるので、多数決が民主主義の1つの要素であることは間違いありません。

この言説からも、知識レベルの高い人達による専制・貴族政治の思想がにじみ出ています。

民主主義を明確に定義することは難しいですが、以下のサイトに掲載されていた

民主主義ってなぁに?|キッズページ|永平寺町議会

「みんなのことは、みんなが話し合って決める」こと

という言葉が、ワタシ的にはしっくり来ています。

確かに選挙で政治の代行者が決まることは間違いありません。多数派が施策を実行しやすいのもその通りです。

しかし、話し合いによっては、多数派の考えを変えることができ、結果として施策も変わる可能性があるのが、民主主義だと思っています。

つまり、ハリス氏支持者は、トランプ氏支持者を攻撃するのではなくて、話し合いの場を作ることが民主主義なのではないでしょうか?

トランプ氏支持者を見下し、間違っていると糾弾し、愚か者と揶揄するのは話し合いではないでしょう。

この点でも、今回動画に出演されたハリス氏支持者が求めているのは民主主義ではなく、知識レベルの高い人たちによる専制・貴族政治であることが垣間見えます。

それこそ民主主義の危機ではないでしょうか?

民主主義だって間違うとうか人間は完璧じゃない

今回の大統領選挙の結果が、最終的にどのような結末を生むかは誰にもわかりません。

まだ、トランプ政権は始まっていませんし、以前とまったく同じになるとは限らないからです。

もしかしたら、アメリカがすごく良くなるかもしれないですし、逆に悪くなるかもしれません。

しかし、それも国民が選んだことです。

たらればというのは、正直、たらればでしかなく、もしハリス氏が勝ったとしても、アメリカが良くなるかどうかは、誰にもわからないのです。

もし、今回のトランプ氏勝利が失敗だったことがわかったとしましょう。

でも、それも投票によって選んだ結末です。国民の選択なのです。

民主主義だって間違うことがあります。人間は完璧ではないので。

ただ、専制・貴族政治のように、国民には投票権も無かった場合、政治の失敗に国民は納得できないでしょう。

また、専制・貴族政治においても、素晴らしい人物が登場し、良い国家になる場合もあります。しかし、それは一時のことでしかなく、歴史を見れば、散々たる終わりを迎えていることは明らかです。

民主主義においても、それは同様で、うまくいかないことも多々あります。

しかし、国民が、自分たちの手で選んだのです。ワタシはそのことが最も重要だと考えています。

つまり、主権は国民にあるということです。

専制・貴族政治においては、主権は国民になく、専制君主に主権があります。

知識レベルの高い人たちだけに投票権を与え選挙をした国家の場合、主権は知識レベルの高い人たちだけです。

そう国民には主権はありません。

で、最終的にはそれを、国民がどう考えるかだけだと思っています。

ワタシはどんなに最悪な結果だとしても、主権は国民にある国家が望ましい派です。

イギリスの元首相 ウィンストン・チャーチルの言葉を借りれば、

民主政治は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば

という感じでしょうか。

民主主義は完璧ではありません。失敗も間違いもあります。

しかし、他の政治形態に比べれば、ワタシは少しだけ良いと思うのです。

ロシアや中国、イスラム圏などの国を日本に住んでいるワタシたちが見たとき、様々感じることがあるのではないでしょうか。

ワタシはそれがすべてを物語っていると思います。

目的は相手の論破ではなく、話し合いによる説得

最後にレス・ギブリン氏の著書 人望が集まる人の考え方の中に、

反対意見を持つ人を論破したくなるのが自然な衝動だが、本来の目的は相手を説得して賛同を得ることだ。

という言葉があります。

今のアメリカに、そして日本においても、この言葉はとても重要だとワタシは考えています。

本動画を見て思ったのは、相手を論破し、相手が間違っていると頭ごなしに否定して、相手の言い分も聞かず、自分たちの主張を押し通そうとしているようにしか見えませんでした。

しかし、それは対立と分断しか生みません。

また、本来の目的は、相手を倒すことではなく、説得して賛同を得ることではないでしょうか。

同じ国家の人間として、よりよい社会を作っていくために、喧嘩をしていては、国家間の戦争とやっていることは変わりません。

戦争反対と言いながら、言論による戦争をしているにすぎないのです。

前述したように、話し合いで物事を決めていくのが民主主義であるならば、最初にするべきは話し合いの場を作り、お互いの意見をまず聞き、理解することではないでしょうか。

相手は絶対に間違っていると決めつけず、相手の主張の良い点を見つけ、最終的に落とし所を探っていく、それこそが民主主義を掲げる人たちの目指すべきところなのではないかなとワタシは考えています。

それが建設的な議論ではないでしょうか。ワタシはそんな風に考えています。

皆さんはどう考えるでしょうか?

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