競業避止契約の是非 – 能力の高い労働者を安く雇うための契約でもある

投稿者: | 2024-10-02

アベプラで、『【競業避止契約】同業への転職や競合会社の設立を禁止?ポジションが大事?強制力はどこまで?|アベプラ』という話題がありました。

競業避止契約の争点

争点は、会社というか、経営者側としては、育てた人材を他の企業に奪われることで、育成コストを損してしまうため、競業避止契約が必要という話なのかなって思いました。

競業避止契約によって労働者を縛ろうということです。

そもそも顧客情報を抜いて競合他社に流したり、元のいた企業に損害を与えるような行動をした場合には問題があります。

ただ、そのために競業避止契約があるのか?というと、競業避止契約の目的からはズレているように思うからです。

なぜなら、1年後に顧客情報を流したり損害を与えたりしてもOKか?というと、それは違いますよね。

つまり、競業避止契約の争点はそこではありません。

育った人材を雇用すれば良い

育成コストを損することが嫌であれば、競合他社から人材を獲得すれば良い話です。

高い給料を払えば、人材は集まってくるでしょう。

でも、経営者側からすると、それは嫌なのです。

社員に高い給料を払えば、会社として利益が出にくくなります。利益が出なければ結果として、経営責任を問われるでしょう。

それは経営者としては困ります。

多くの企業において、企業の利益を圧迫しているのは人件費です。

ですので、安い賃金で能力の高い労働者を雇うことが、今の経営者に求められていると言っても過言ではないでしょう。

しかし、アベプラの中でパックンが言っているように、生産性を上げ、利益を出すことの方が重要ではないでしょうか?

企業の目的とは?

そもそも企業の目的とは何でしょうか?

商法によれば、商行為とは、

(絶対的商行為)
第五百一条次に掲げる行為は、商行為とする。
一利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
二他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
三取引所においてする取引
四手形その他の商業証券に関する行為
(営業的商行為)
第五百二条次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
一賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
二他人のためにする製造又は加工に関する行為
三電気又はガスの供給に関する行為
四運送に関する行為
五作業又は労務の請負
六出版、印刷又は撮影に関する行為
七客の来集を目的とする場屋における取引
八両替その他の銀行取引
九保険
十寄託の引受け
十一仲立ち又は取次ぎに関する行為
十二商行為の代理の引受け
十三信託の引受け

と書かれています。

ワタシはこれが商売の基本なのではないかなと考えています。

つまり、何が言いたいのかというと、この中に労働者を安い賃金で雇う行為は商行為ではなく、それによって利益を得ることは商売ではないということです。

ましてや、労働者の職業選択の自由を奪うことも書かれていません。

企業の目的とは利益を得ることに間違いはないのですが、あくまで商行為によって利益を得ることであり、労働者を搾取することではないのです。

まさにパックンが言っているように、生産性を上げて利益を出すことが本来あるべき姿だと思います。

給与キャップ

話の中で、給与キャップという言葉が出てきました。

給与キャップがないと給与の高騰が起き、産業が終わってしまうという話です。

言わんとすることは理解できますが、給与の高騰によって終わってしまうような産業なら、そもそも必要ないでしょう。

それに需要と供給の関係がありますから、そもそも青天井に給与が上がることはありません。無い袖は振れないからです。

アベプラでは、大リーグの例を出し、大富豪が赤字覚悟でやっているという話がありました。

では、大リーグは産業として終わっているか?というとそんなことはありません。

また、大富豪がお金を出すのは、大リーグの純粋な利益だけで考えているからではないでしょう。

そこには大リーグのチームを持っているというステイタスがあります。

そこに価値があるのです。

そこに価値を感じていると言っても良いでしょう。

例えば、絵画。何十億というお金で売買され話題になることがありますが、絵画に価値を感じない人からすれば、なぜそんなに高額なのか意味不明でしょう。

ワタシは実際にそう感じます。

けれど、価値を感じる人がいるから何十億という値段がつけられるのです。

そして、その価値は人よって違うという話。

なので、競業避止契約が無くなっても、給与高騰で産業が終わることはありません。

必ずどこかで天井ができますし、払ったお金に見合った成果が出なければ給与は下がっていくでしょう。

確かに育成損は生まれるが、それが商機でもある

育成コストの損については、確かに発生します。

しかし、それが商機でもあることを忘れてはいけません。

実際にアベプラの中でも、社員の高年齢化で給与がどんどん高くなっているという話がありました。

その一方で新しい社員をどんどん入れて、高い給与の人が抜けていくことで、安い給与で従業員を雇うことでうまく言っている会社もあるのです。

つまり、社員育成をメインにするような会社があっても良いという話。

例えばですが、複数のIT系の大企業と契約し、社員を育成して、育成後はそれらの大企業に就職させるというような感じです。

これはあくまで一例ではありますが、他にも新しい商売が生まれるかもしれません。

競業避止契約はあくまで個人と企業の個別契約であり、法律ではありません。

法律になっていないのは、個人の自由を奪ってしまうからだとワタシは考えています。

さらに、競業避止契約によって、給与が上がることを押さえることができるため、個人からの搾取しているとも言えます。

結論として、ワタシ的には競業避止契約はやはり不要なのではないかなと思います。

ただし、冒頭で書いたように競合他社へ情報を流したり、元の会社に損害を与えるような行為は、そもそも問題ですから、そこを縛るべきでしょう。

余談:同じ業界に転職したら潰してやる

ワタシはとある会社にいたときに、「同じ業界に転職したら潰してやる」と言われたことがあります。

辞めてほしくなかったのでしょうが、ワタシとしては信頼関係が壊れたと感じました。

その後、様々な会社を経験してきて感じたのは、多くの経営者が同じようなことを考えているということです。

つまり、能力の高い人間を安く使いたいということ。

ワタシは7人ぐらいいる部署で、その部署の仕事の5割ぐらいを担当していました。

もちろん、残業なんて当たり前で、家で仕事もしていましたし、当時は仕事をしていることがワタシ自身のアイデンティティのように感じていたので、苦ではありませんでした。

けれど、今考えてみるとちょっとおかしかったんですよね。

さらに、後からわかったことですが、ワタシの給料が一番安かったという事実があります。

他の従業員が抜けても問題は無いが、ワタシが抜けると大きな損失になるということです。

だから、脅しのようなことを言われてしまったのだろうなと思います。

他にも違う会社で似たようなことがあり、今思えばずっと搾取されていたんだなと感じます。