正義とは何か?「正義の教室」Kindle読書

投稿者: | 2020-04-27

正義とは何でしょうか?

人類はこれまで正義の名の下、大虐殺を行ってきました。そんな歴史がありながら、人類は正義を捨てることはせず、今なお正義を振りかざします。これはとても不思議なことです。

正義とは何なのでしょう?

あなたの行いは正義でしょうか?

正義とは正しい行いのことでしょうか?

では、正しい行いとは何でしょうか?

何をもって正しいのでしょうか?

これらの問いに答えられる人は少ないかもしれません。ワタシもよくわかりませんでした。

しかし、それは書籍「正義の教室」を読んで氷塊しました。最近、読んだ本の中では、ダントツに面白く、とても考えさせられる内容でした。

正義とは何かを知りたい、考えたい方は、ぜひ読んで欲しい一冊です。

以降では書籍の内容に触れながら、「正義とは何か?」について書いていきたいと思います。

3つの正義

「正義の教室」では、正義は3つに分けられると述べています。

  • 平等の正義:功利主義(幸福重視)
  • 自由の正義:自由主義(自由重視)
  • 宗教の正義:直観主義(道徳重視)

詳しくは書籍をご覧いただくとして、ざっくりと言うと、

平等の正義:功利主義(幸福重視)とは、最大多数の最大幸福のことです。最大多数の最大幸福を追求していくと、例えば臓器くじという欠点がでてきます。また、幸福を数値化できないという欠点もありますが、もし数値化できたとしても究極のディストピアになり、それを正しいと考える人はいないでしょう。

自由の正義:自由主義(自由重視)とは、他人の自由を制限しなければ自由にしてよいということです。本書では自由主義を強い自由主義と弱い自由主義に分け、厳格な方を強い自由主義としています。強い自由主義には、例えば自殺をしたい親の自由とそれを止めたいという人で矛盾が生じてしまいます。また、弱肉強食の世界になるため、弱者は排除されるという欠点があります。

宗教の正義:直観主義(道徳重視)とは、神の存在というのがわかりやすいと思います。絶対的な正義、絶対的な善というのが存在するということです。しかし、「神は死んだ」といったニーチェによって打ち砕かれています。また、「これからの「正義」の話をしよう」で一躍有名になったマイケル・サンデル氏の著書にあるトロッコ問題を解決できないという欠点があります。

つまり、どの正義も欠点が存在するということです。また、それぞれの正義は相容れない部分があります。正義と正義がぶつかり合うということです。これは人類の歴史がまさに物語っていますね。

本書では、絶対主義VS相対主義からはじまる哲学の歴史について紐解き、正義論や構造主義、ポスト構造主義についても解説しています。それらを通してわかることは、人類史上、未だ正義については明確な答えがないということです。

以下に本書の結論について書いています。それは本書の内容を読んではじめて理解できる内容でもあるので、ぜひ、一度読んでいただきたいです。


「正義の教室」における正義とは何か

結論から書くと「正義の教室」では、「正義とは正しいことを考え続けること」としています。詳しい理由については、ぜひ本書を紐解いてください。哲学がこの結論に行き着くまでの経緯を読むと納得できる方も多いと思います。

ワタシは、これがとても興味深い結論だと思いました。元々、ワタシは正義など存在しないと思っていたからです。これは本書の序盤で主人公が考えていることと一緒でした。正しいことなど存在しないという立場です。しかし、それは違っていたかもしれないと思いました。

正義について改めて考えてみる

本書ではここで終わっていますが、少しワタシ的に考えてみたことを書いていこうと思います。

絶対的な悪も死んだ

まず、正義とは、正しい行い、良いこと、善と表現することができると思います。逆は悪い行い、悪いこと、悪となります。

では、悪とは何でしょうか?

絶対的な悪は存在するのでしょうか?

ニーチェによって神が死んだときに、悪も死んだように思います。

神は本当に死んだのか?

ニーチェによって神が死んだとされていますが、実際に宗教は未だに健在で、神の存在を信じている人は多くいます。

そもそも、神が本当に存在するかどうかというのは、実際にはわからないというのが実際です。証明のしようがありません。

神がいないことを証明することができないのです。これはいわゆる悪魔の証明で、悪魔によって神の存在否定が証明できないというのは皮肉ですね。

そういう意味で、神の存在は未だに信じられているのです。ただし、それは旧来の宗教とは違った意味、概念での神になります。

社会が人間に概念を創出させた

話がそれたので話を戻しましょう。

そもそも、良いことや悪いことという概念が生まれたのは、人間が社会性を持ったからだと考えます。つまり、社会(共同体)が生まれたことによって、そこに良いや悪いという概念が生まれ、社会という枠組みの中で、善悪を判断しているということです。これは、構造主義やポスト構造主義の考え方に近いですね。

また、良いことや悪いことという概念は人間のみと思いがちですが、群れをなす動物にも同じようなことがあると思います。群れの中でルールを破った動物は、ボスや群れから仲間はずれにされたり、いじめられたりする行動が観察されています。その動物の群れ(社会)の中では、良いこと、悪いことというが存在しているということです。

そう考えると、生命というのが、良いこと・悪いことの根幹にあるように思います。

生命とは

生命とは何でしょうか?

これに明確に答えることができる人はいないでしょう。

あくまで人間を主体として考えた場合、「生命活動とは次の世代へつなぐこと」とワタシは考えます。生命として正しい在り方は「存在し続ける」ことということです。それは、DNA(遺伝子)によって生み出されたとワタシは考えています。つまり、生命とはDNAという考え方です。

先程の群れを作る動物についても、「(生命活動できるDNAが)存在し続ける」ために、群れを作っていると言えます。そこにルールが生まれたのも「(生命活動できるDNAが)存在し続ける」ためと言えるかもしれません。人間が社会を作った、もしくは作らされたのかもしれませんが、それも「(生命活動できるDNAが)存在し続ける」ために生み出したものと考えられます。

つまり、すべての根幹に「(生命活動できるDNAが)存在し続ける」という原理が存在しているのではないかということです。また、DNAだけ存在していても意味がありません。「生命活動とは次の世代へつなぐこと」と考えているので、つなぐための存在として人間が必要だと考えています。

良いこと、悪いことに適用する場合、これは人間にとっての良いこと、悪いことなので、

  • 良いこととは「人間が存在し続ける」ためにすること
  • 悪いこととは「人間の存在を終わらせる」ためにすること

となります。

こう考えると、意外といろいろなことが当てはまるように思います。

ワタシが考える正義とは

正義も同じように考えられます。つまり、

正義とは「人間が存在し続ける」ための行為・概念

ということです。

ここで重要なのは、「人間が存在し続ける」ことであり、そこに多数は全く関係ないということです。そして、突き詰めていけば、それは人間という種ではなく、個人になると考えています。人間はそれぞれDNAが異なるからです。そのため「絶対正義が存在しない」のです。

トロッコ問題で言えば、切替器のレバーを1人の方にしたとしても、5人の方にしたとしても、どちらも正義になります。なぜならば、どちらの場合も「人間が存在し続ける」からです。また、「人間の存在を終わらせる」ことでもあるので、どちらの場合も悪いことになります。

歯切れが悪いように思うかもしれませんが、ワタシとしては、今、これが考えられるベストかなと思っています。

そもそも神の存在否定は、絶対的な正しさの否定でもあり、そう考えれば絶対的正義は存在しないということになります。であれば、正義は存在しないか、または様々な正義が存在するという結論になります。様々な正義とは、立場や状況、考え方によって正義が異なるということです。ワタシの結論は、端的に言えば後者ということになります。

絶対的正義が無いため、人は正義を振りかざし、ぶつかり合うということです。

このあたりについては、また時間のあるときに、いろいろと考えたいなって思います(*´ω`*)

余談

「正義の教室」を読みながら、いろいろなことを考えました。改めて正義とは何か?について考える良い機会になったと思います。

ふと考えたのがアニメ「PSYCHO-PASS」です。色相という人間の心の色を測定し、善悪が判断されています。その基準はシビュラシステムです。見た方なら原理はわかると思いますが、そこには絶対的な正義は無いように思いました。ディストピア的な面もありますが、もしかするとシビュラシステムは一つの完成形かもしれません。

また、エヴァンゲリオンのマギシステムのようなものも考えました。功利主義、自由主義、直観主義による多数決、または最適解によって善悪を判断するというものです。重み付けをどうするか?という問題があるのと、結論に人間が納得できないかもしれないというのはあるかなと思います。こちらも、「PSYCHO-PASS」のシビュラシステムと同様の問題を抱えそうです。

他にもいろいろと考えたのですが、他にも本を読んだりして、知識を広げてから、また改めて正義について考えてみるのも良いかなーって思っています。

参考リンク


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